いとうせいこう「想像ラジオ」で知った3.11

私のおすすめの一冊は、いとうせいこう著作「想像ラジオ」です。「想像ラジオ」は、読み手に語りかけるような、まさに、ラジオを聴いているような気持ちになれる文体です。たわいのない会話から始まるラジオですが、ただのラジオではなく、そこには時間も日にちも関係の無い、特別な場所から流れていることが、示唆されます。 そして、本を読み進めているうちに、その物語が、東北大震災と関係していることがわかります。 物語は、亡くなってしまった人、生きている人の交互の想いを吐露するように進んでいくのですが、そのふたつすらも、どんどん... Read More

冷たい密室と博士たち

私は以前、「すべてがFになる」のアニメを見てS&Mシリーズ(著者:森博嗣)に興味を持ちました。そして、早速原作の続きが気になって書店で「冷たい密室と博士たち」を買って読んだのですが、登場人物の内面の掘り下げやトリックの意外性など多くの見どころがあって面白く一気に読んでしまいました。 主人公は普段やる気がないような感じなのですが、興味を持ったときだけ頭の回転が速くなり、なるほど探偵役にぴったりだなと感じました。ヒロインは全体的に能力は高いですが、隠れて喫煙していたり主人公に対してむきになったりと背... Read More

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

不穏なワンダーランドで暮らすことになった主人公が、最初はそのパラレルワールドのような世界から脱出しようとするものの日々の生活に徐々に慣れていき、次第にそこから抜け出す気持ちを失い永遠にその世界に留まってしまうという話で面白かったです。 ワンダーランドの独特のファンシーな雰囲気も素敵でしたが、「僕」と語る主人公の「影」というワンダーランドに入るときに切り離された自分の影が、ここから脱出してまた一つになろうと僕を救おうとする展開にハラハラしました。 結局、僕は「ここに残る」と言い、自分の影と永遠に分かれてワン... Read More

何度読んでもほっこりする「ランチのアッコちゃん」

私は仕事で疲れ果ててしまったときは、この本を読むと心がほっこりするので何度読んだかわからないくらいです。本の帯に“読むとどんどん元気が出るスペシャルビタミン小説!”とあったので買ったのですが、その通りになりました。 派遣社員として働いている三智子という女性が、45歳独身でがっちりとした肩幅に長身の「アッコ女史」こと黒川敦子部長に元気を引き出してもらうお話です。 読んでいると、自分自身も三智子と同じように、徐々に心がほぐれていくのを感じることができます。読み終わったときは、さあ私も元気を出して頑張ろうと思え... Read More

南部芸能事務所は登場人物の数のわりにドラマティック

畑野智美さんの南部芸能事務所が面白いです。 登場人物は事務所関連の人ばかりで限定的な世界が描かれているのですが、非常に奥深くて胸に滲みます。 新庄が溝口にお笑い芸人になろうとアプローチすることから物語が始まるのですが、溝口は南部芸能事務所のオカマな社長の相方だった男性の息子。 10歳上の女性と付き合って本気だと思っていたら、愛人にされていたという間抜けな感じもイイ。 業界の師匠的存在も所属している南部芸能事務所だけど、ぜんぜん売れっ子がいないという不思議さが妙です。 実はシリーズ化されていて、短編を読み進... Read More

空飛ぶタイヤを読んで面白かったこと

空飛ぶタイヤは、かなり面白い小説です。池井戸潤さんの作品らしく、前編に渡ってストレスの中読み進めていくということになります。しかし、このストレスというのが、いい緊張感になって楽しくなってしまいます。さらに、緊張感の中にも、時々起きる好転がとても病みつきになってしまう感じになっています。 この小説は、運送会社の車からタイヤが外れてしまいそのタイヤに惹かれた主婦が死んでしまい、整備不良の事件なのではないかと疑いをかけられるところから始まります。 そして、実際には、整備不良ではなく、その自動車会社の機能的なミス... Read More

「石の繭」がイチオシの捜査第一課殺人犯捜査第十一係

麻見和史さんによる小説、捜査第一課殺人犯捜査第十一係が大好きでシリーズを通して楽しみに読み進めています。 捜査第一課殺人犯捜査第十一係は無敗のイレブンと言われるほどに事件解決率がダントツのチーム。 その中心にいるのが主人公如月塔子の教育係を務める鷹野警部補です。 身長152.5センチの如月と180センチを超える鷹野警部補の凸凹コンビが筋読みを行い、事件解決へと突き進みます。 この2人はシリーズを通して、もしかして恋愛関係に突入するかもと思わせつつ、如月の尋常とは思えない鈍感さがネックになっている状況。 科... Read More

現代日本文学の最高峰!村上春樹「ノルウェイの森」

村上春樹さんはおそらく多くの人が知っていることと思います。毎年ノーベル賞の時期になると、ノーベル文学賞の候補に挙げられ話題になる大作家さんです。 「ノルウェイの森」は、村上春樹氏の代表的な著作です! あらすじは、東京の大学生「ワタナベ」が、学生時代からの友人直子、とある事件により今は会えなくなってしまったキズキ、同じ大学に通う女子大生緑など、様々な人との出会いを繰り返していくというものです。 作風としては日常的でプライベートな要素の強い内容ですが、村上春樹氏が持つ死生観や社会に対する洞察、そしてカルチャー... Read More

「風と共に去りぬ」は、映画よりも壮大なスケールを感じられる

映画では何度も観たことがある「風と共に去りぬ」ですが、初めて小説で読みました。映画よりも更に細かな情景が壮大なスケールで描写されており、その時代背景や登場人物の心の揺れ動きも手に取るようにわかるとても楽しい作品でした。 アメリカの南北戦争勃発当時の、南部の貴族たちの優雅な暮らしぶりが目に浮かぶように描かれており、歴史書よりも面白く読むことができました。奴隷たちが置かれた苦境の中で精一杯生きていく力強さを感じることができ、読み手の気持ちがどんどんその時代へと引き込まれていくような作品です。 映画では描ききれ... Read More

実用書 オイラーの贈物

この本は、数学の基礎、応用などを基にした数学の美に関する本です。 全ては理解できなくても、「こういうことが起こるんだ」と感動できる本でもありました。 オイラーという数学者は、「e^iπ=-1」という綺麗な式を導いた人で有名です。 これは、ネイピアの数eを虚数iと円周率πが整数でつながっていることを意味しています。 順をおって、三角関数とは何か、指数対数関数とは何か、など基礎的な計算で導きながら、書かれているので、数学が好きな人は興奮するでしょう。 例えば、πはなぜ3.14かなど、正多角形と円を使った証明や... Read More