日常に溶け込む超常現象ー家守奇譚を読んでー

何だか訳の分からない奇妙な本に出会ってしまった。一応、私なりの褒め言葉である。
 あらすじ―駆け出しの物書きである綿貫征四郎はふとしたきっかけから、既に故人となった学友・高堂の生家の管理を任される。とある風雨の日、綿貫の元へ高堂が突然訪ねてきた。その日を皮切りに、綿貫と浮世離れした物の怪や植物たちとの邂逅が始まった。

 通常では起こり得ない、奇怪な出来事がまるで当たり前のことように描写されているが、それらは不思議と違和感無く日常風景に溶け込んでいた。物の怪たちが平和な暮らしを送る綿貫にごく自然に接近し、彼にちょっかいを出す場面は大変愉快であった。本書ではそれらの他にも、植物を利用した擬人法も満載である。例えば、物語の序盤では、サルスベリという植物が登場するが、これは主人公に惹かれている存在として扱われている。物の怪や植物たちの描写は不思議と当てつけたところが無く、物語によく馴染んでいた。
 それにしてもこの主人公、普通であれば悲鳴を上げて驚くようなことをさも当たり前のように受け入れられる適応力を兼ね備えている。恐らく綿貫は情に厚く、度量の大きい人間なのであろう。サルスベリが彼に懸想するのも頷ける。

 読み終えて、暫くの間、何とも言えない不思議な気持ちになり、自分も非日常の中にいるような感覚に陥った。終始、自然豊かで穏やかな綿貫の暮らしが描写され、とても癒されたのは事実だ。非日常に浸るにはもってこいの一冊であった。