「しゃべれどもしゃべれども」で知る笑いの緊張と緩和

普段はビジネス書や政治、歴史ものなどを読むことから、時折、軽快で明るい小説を読みたくなります。
その中でまず真っ先に思い浮かんだのが、佐藤多佳子さんの「しゃべれどもしゃべれども」です。

話しは割とシンプルです。
主人公は二ツ目落語家である今昔亭三つ葉。

人とのコミュニケーションや、話し下手な人間が自分を克服するために主人公の元に落語を習いにくる、というお話なのです。
出てくる人物が実にイキイキと描かれていて、ゲラゲラと笑いながら読んでいました。

主人公の元を訪れる人物は4人。
対人恐怖症で仕事を辞めざるをえなくなった友人。
口べたのあまり失恋してしまった女性。

勝ち気で生意気なあまり、クラスでいじめにあっている(本人は認めていない)少年。
本来歯に衣着せぬ物言いなのに解説になるとおとなしくなる元プロ野球選手。

全員一癖ある人物ばかりですが、中でもとりわけ魅力的なのは、村林という少年です。
いわゆる悪ガキですが、頑固な面もある。
関西から東京に越してきたという事もあり、クラスでいじめにあっている、と親は心配するのですが、本人は認めない。

主人公の三つ葉も手を焼く子どもですが、この子がいる事で話しの推進力が増しているように感じます。
この小説で一番好きなシーンが、少年・村林が覚えた落語を、クラスのみんなに披露する場面です。
笑いは緊張と緩和と言われますが、正にこの場面はそのことを表わした場面であります。

少年が落語をするという事でクラスメイトを始め、まわりの大人たちも緊張をしています。
ある事で、ドッと笑いが起きるのですが、その後の村林の無邪気な子どもの描写も見事でした。
本を読みながら笑い転げました。

著者の佐藤多佳子さんはこれまで拝読した事がなかったのですが、上記場面の描写を読むに、実に子どもたちを普段からよく見ているんだろうな、と感じました。
人間関係や話しが苦手な人は読んでみてはいかがでしょうか?