南部芸能事務所は登場人物の数のわりにドラマティック

畑野智美さんの南部芸能事務所が面白いです。

登場人物は事務所関連の人ばかりで限定的な世界が描かれているのですが、非常に奥深くて胸に滲みます。

新庄が溝口にお笑い芸人になろうとアプローチすることから物語が始まるのですが、溝口は南部芸能事務所のオカマな社長の相方だった男性の息子。

10歳上の女性と付き合って本気だと思っていたら、愛人にされていたという間抜けな感じもイイ。

業界の師匠的存在も所属している南部芸能事務所だけど、ぜんぜん売れっ子がいないという不思議さが妙です。

実はシリーズ化されていて、短編を読み進めていくというカタチなのですが、どんどんと世界が深まっていく楽しさがあります。

中でも絶対に売れそうにないけど、ディープな感じが一部だけマニア受けしているナカノシマというトリオは新庄と溝口の先輩芸人。

見た目がキモいけどテレビに出てもそこそこ重宝される器用さがある、だけど売れない。

芸能界は一般的な会社とは異なって、緩くもありシビアでもある。

女も男も大変なんですね。

オカマな社長が垣間見せる乙女な恋心や溝口を息子のように猫可愛がりするところはとても微笑ましく、またせつなくもあるのです。

新庄と溝口が売れそうにないけど努力をするところにも感情移入してしまうのでありました。