奇妙な夢の世界へーf植物園の巣穴を読んでー

「本当に夢だった。」

 この本を読み終えて真っ先に思ったことだ。自身初の梨木作品だったが、初見ではその独特の世界観に何度も置いていかれた。同じ箇所を繰り返し読んでは自分の理解を確かめる、そういった作業が何度も続いた。
 あらすじ―植物園の職員である主人公は勤務中、木のうろに落下したことから世界が変化する。改変後の世界で奇妙な物の怪たちとの出会いをきっかけに彼は過去を思い起こすことになる。
 私がこの本に初めて出会ったのは図書館だ。名前は知っている作家だからと何気なくこの本を借りた。その時まで梨木香歩の作品は1冊も読んだことが無く、どういった作風の作家なのかも分からなかったので早速、試しに読んでみることに。

 序盤から早速奇怪な世界が広がっていた。時間が交錯したり、現実にはあり得ない出来事が起こったり、不思議な生き物に出会ったりと理解するのに時間の要る出来事が続いた。奇妙な事件が連続して起こるにつれ、次第に主人公は忘れかけていた大事なことを思い出すようになる。誰しもが夢を契機に過去の出来事を思い出すことがあるであろう。この物語ではそういった現象を上手く利用して主人公の過去を想起させている。有るようで無かった、新鮮な描写だったと思う。終盤で、主人公が忘れてかけていた存在に気付く描写には感動を覚えた。

 最後まで分からなかった(あるいは忘れたのかもしれない)ことがある。それはf植物園の「f」とは果たして何を意味するのかということだ。今度はその考察も兼ね、再び図書館でf植物園の巣穴に巡り会えることを期待したい。